多床室でいいのか
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
昔、どうやってプライバシーを確保しようか悩んだ多床室が最近復活してきました。
色々と理由はあるのでしょうが、今多床室の施設を建設して本当に良いのでしょうか。
個室ユニットの基準が出来る前は、多くの施設が多床室で整備されていましたね。
「個室中心にしたい」と考えても、今は数の充足が大切だから4床室中心にしなさい、という指導があった訳です。
当時は、4床室で一体どのようにプライバシーを確保するか、頭を悩ませていたことを思い出します。
最近、この悩みが復活するケースが増えてきました。4床室での施設整備がまた行われているからですね。
4床室での整備が必要な理由は色々あると思いますが、一つの理由として個室の利用料が高い事が挙げられます。
個室は高くて負担が大きい、そのため4床室を利用したい人が多いのでそのニーズに対応するのだ、という理屈ですね。
でもちょっと考えてみてください。そもそもなぜ個室の利用料が高いのでしょうか。
個室での施設整備は面積が大きくなってしまって建設費が高いから、という理由もあるでしょう。
しかし、特別養護老人ホームの面積基準は、個室でも4床室でも一人あたり10.65㎡で一緒です。
面積が広くなる理由は、個室の場合ユニット形式にすることで食堂、浴室などが個々に必要になることが大きな要因であり、個室化が要因ではないはずです。
個室であっても4床室であっても本来面積の差はそれほど大きくならないはず、だったら利用料(ホテルコスト)の差は本来もっと小さくなるはずです。
個室=贅沢という意識がどこかに働いている気がします。今の時代、個室が当然だと思うのですがいかがでしょう。
利用料が高いから4床室を建設する、でなくて歪みのある制度の方を直すべきだと思うのです。
近い将来、4床室の施設は利用者に好まれなくなる可能性が高いと思います。
そのときになって施設を改修しようとしても、多額の費用がかかってしまって改修を進めるのが難しいでしょう。
長期的な視野でものを考え、施設整備の計画を立てて欲しいなと感じています。