02.緩やかな死角をあえて作る

介護環境デザイナーの間瀬樹省です。

 

「利用者の見守りをしやすいように見通しのよい設計にすべき」という言葉を良く聞きます。

 

施設を運営される方が死角の無い設計を望み、設計者がそれに応える形で見通しのよい施設がたくさん作られてきました。

 

そのため大きなホールのような食堂や、何も遮るもののない広い廊下が作られてきたわけです。

 

しかし、施設を住まいとして考えてみるとどうでしょうか。落ち着ける環境と言えるでしょうか。

 

私達が自宅で食事を食べるシーンを考えてみましょう。広さはどのくらいですか?

 

介護施設は自宅とは違ってもっと大きな人数が暮らす建物ですが、毎回大食堂での食事では落ち着かないですね。

 

せめて大家族と同じくらいの規模で食事を行いたいものです。大人数でのにぎやかな食事は、外出で行くレストランで味わえば良いのです。

 

人数の大きな施設であれば、食事スペースは分散させてある程度落ち着ける小さな空間で行えるようにしましょう。

 

ダイニングとリビングがつながっていたら、連続性は確保しつつ家具などで緩やかに仕切りたいものです。

 

廊下と食堂がつながっている場合も同様です。廊下と食堂の区分が分かるよう、床・天井・家具などでゾーンを明確にする工夫をしてください。

 

廊下と食事スペースをお互いが確認できる仕切りで区分した例
(廊下と食事スペースをお互いが確認できる仕切りで区分した例)

 

大きな空間で視線を遮る物がない状況は、いつも見られている、いつも視線を感じながら暮らすということになります。

 

これでは落ち着かないですよね。

 

緩やかなに空間を区分けすることで、そこで暮らす方は落ち着く事ができ、職員もその様子を何となく確認することができます。

 

自宅と同じ、は無理でもなるべくそれに近いスケールの空間でそれぞれが落ち着くことのできる、豊かな空間を目指しましょう。

 

参考記事

>01.複数の姿勢が取れるようにしたい