05.くつを脱いでくつろぎたい

介護環境デザイナーの間瀬樹省です。

 

お年寄りが入居している施設は、そこで過ごしている方にとっては「住まい」ですよね。

 

自分の自宅と感じられるかどうかは別として、現在の住まいがその介護施設である事は間違いありません。

 

では皆さんが自宅で過ごす時はどのような姿で過ごしていらっしゃるでしょうか。

 

今日は特に足元に注目してみます。

 

靴下でしょうか、裸足でしょうか、それともスリッパなどでしょうか?

 

少なくともいわゆる「靴」を履いている方は少ないでしょう。

 

日本は畳の文化の国、玄関で靴を脱いで室内に入るのが当たり前です。

 

(そういえば、昔は外国人が靴のまま家に入ってしまうというコメディーの映像やまんがなどがありましたね…)

 

日本の介護施設の多くは入口で靴を脱ぎます。でも室内では靴の形状をした上履きを履いていることが多いと思います。

 

靴を履いていたら、多くの日本人はくつろげない…でも今の施設では靴を履いて過ごしているのです。

 

住まいと感じられるには靴を脱いでくつろぐ事が必要、であれば靴を脱いでしまえばよいのですが、それが出来ない訳です。

 

なぜなのでしょうか?
その理由を考えてみましょう。

 

<床の素材が靴が必要な物になっている>

 

普通の家の床はどんな素材でしょうか?

 

最近多いのはフローリングですね。昔なら畳か板張りです。

 

しかし今の施設で圧倒的に多いのは「長尺シート」と言われる樹脂素材の床材です。

 

コンクリートに長尺を敷いた床は、固く冷たくて素足で歩く気にはなれないですね。

 

素足やスリッパなどで過ごすには不向きな素材になっていることが、靴を必要とする一因になっているのです。

 

<移動距離の問題>

 

移動する距離が長いと履き物が欲しくなります。

 

学校や大病院のような施設の室内を裸足で移動する事は想像できないですよね。

 

普段長い距離を歩くのは屋外が多いですが、その際には足の負担を和らげるように自分に合った靴を履きます。

 

室内であっても、長い距離を歩くときは足に負担がかかるので履き物が欲しくなる訳です。

 

しかし、自宅のような限られた移動距離であれば靴は不要です。

 

介護施設でも、自室・食事のスペース・トイレなどの移動を短い距離にできれば、靴が必要とは感じないはずです。

 

大規模な施設であっても生活単位をいくつかに区切る事によって靴を必要と感じない空間にできるはずです。

 

<汚れの問題>

 

歩いていて、足の裏が汚れるのは誰でも不快です。

 

自宅を裸足で歩いているときは、足の裏が汚れるなんて考えませんし実際あまり汚れる事はないと思います。

 

でも、裸足で歩いていて足の裏が真っ黒になったり、ご飯の食べこぼしが足の裏につくような場所では履き物を履きたいと感じるでしょう。

 

ほとんどのお宅で、トイレにはスリッパがあると思います。どんなに床をきれいにしている家でも置いていますね。

 

これは「トイレの床=汚い」という気持ちがあるので、裸足では入りにくいからなのだと思います。

 

床が清潔で心地よく歩ける事も、靴を不要とするためには必要な条件になるのです。

 

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いかがでしたでしょうか。

 

日本人がくつろぐ為の条件である「靴」の問題、施設の計画の際には素足でくつろげる空間を目指してくださいね。

 

感触の良い本物の木を使った床
感触の良い本物の木を使った床。素足で歩くことに抵抗を感じません。