ハウスメーカーで介護施設を建てるということ

介護環境デザイナーの間瀬樹省です。

 

普段は介護施設の設計を行っていますが、別の設計事務所が図面を作成していたり、すでに建設がスタートしている現場にアドバイス役として関わる事があります。

 

そのアドバイス役で関わっている現場で感じた事なのですが…

 

そこはすでに事業主さんがハウスメーカーさんに建物の建設を依頼されている現場で設計の内容についてアドバイスをさせてもらっています。

 

普段はそれぞれの地域のゼネコンさんとのやりとりが多く、ハウスメーカーさんと一緒に仕事をするのは初めてです。

 

実際にやってみると、思った以上に制約が多く難しいものだと感じています。

 

いくつか例をご紹介します。

 

・間取りが自由にならない

 

今回は軽量鉄骨造の建物なのですが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の多くの建物のように柱と梁で支える構造ではなく、細い柱と壁で支える構造なのです。

 

太い柱と梁で支える構造であれば、中の間取りは比較的自由になります。

 

私が関わり始めたときにはすでに間取りが確定されつつありましたが、通常ですと動線などに配慮した調整は十分可能な時期でした。

 

しかし今回は着工を急いだハウスメーカーが構造計算を見切りでスタートしており、間取りを変えると構造計算はやり直しとのこと…

 

そのままの間取りではさすがに使いにくく、一度構造計算をストップして急いで大まかな変更を行いましたが、その後は変更が難しくなってしまいました。

 

・自由な設備が使えない

 

浴室にしてもトイレにしても扉にしても、使いやすさを検討して最も性能とコストのバランスがとれたものを採用したいですよね。

 

しかしハウスメーカーの製品は標準の仕様が決まっており、それ以外のものを使おうとしても使用不可だったりコストがとても高くなったりするのだそうです。

 

ハウスメーカーの設備は、一般住宅向けに大量生産することでコストダウンを図っていますが、介護施設にそのまま使用するのが難しいものも多いはずです。

 

それをそのまま使う前提で製品を企画しているということは問題であると感じます。

 

また浴室も、ユニットバスを使用するのが基本だとか…
普通にお風呂を作るのも難しいようです。

 

・外観が選べない

 

地域を支える施設として、その地域に合った外観にしたい。特徴のある外観にして地域の方に覚えてもらいたい。

 

そんな風に思っても、選べる屋根材や外壁材は決まっていて、その中から選ぶことしかできないのです。

 

色々と個性を出したいと考えていても、街中の普通の住宅のようなデザインしか選べないというのは、介護施設としてどうでしょうか。

 

もう少し選択の幅を広げるとか、介護施設向けの商品は自由度を高めるなどの工夫が必要であると感じますね。

 

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今回の現場はハウスメーカーのある特定の製品で建てようとしているためにこのような制約があるのだと思います。

 

その分安くできます、ということなのでしょうが、使い勝手や個性の演出にかなりの制約が発生しますので、それでも良いのかどうかは十分検討する必要がありそうですね。

 

ハウスメーカーは介護分野について研究していたり、かなり実績がある会社も多いので今回は少々残念に感じています。

 

現時点では、優秀な設計者と柔軟な対応が出来る施工業者と一緒に建物を計画する方がより優れた建物が造れるのではないかと思います。