09.調理の過程を確認できるキッチンにしよう
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
介護施設の食事と言えば、どんな食事を提供するのか、メニューの内容や美味しさについて検討されることが多いと思います。
食べる食事そのものも大切ですが、それがどのように提供されるのかについても検討が必要と感じます。
介護施設の食事は、だまってテーブルに座っているとどこからか運ばれてきて、食べ終わると片付けられる…
レストランであれば当たり前ですが、介護施設は住まいであるべき!と考えると不自然な食事であると言わざるを得ません。
自宅での食事を考えると…
食材を買い、材料を揃えて調理を行い、盛りつけをしてようやく食べられるようになりますね。
食べ終わったら食器を下げて、きれいに洗ってから食器棚へ…
でも多くの介護施設での食事は、「食べる」という場面だけを切り取った食事行為になっているわけです。
これを「住まいにおける食事」にするためには、食事を作る過程や片付ける過程が確認できることが必須です。
できれば食事の準備や片付けを見ているだけでなく、利用者さんも参加できるようにしたいものですね。
・大きな厨房の場合は…
とは言っても、大きな施設の場合は厨房が別の場所にあって食事の空間とは離れていることも多いでしょう。
厨房は施設のバックヤードに計画されてしまいがちですが、できれば利用者さんも通る場所に近接して設けましょう。
そして、その一部をガラス張りにします。そうすることで調理の様子を見ることができるようになります。
自分が食べる食事は、この場所で、この方達が作ってくれているのだということが理解できるようになります。
調理する側も、見られていることを意識すると程よい緊張感を持って仕事をすることができます。
そして、すべての作業を厨房でやってしまうのでなく、一部を食事スペースの近くで行うようにしましょう。
盛りつけ、ご飯やお味噌汁の準備などを食事スペースの近くで行うことで、自分が食べる食事への興味がぐんと湧くようになります。
盛りつけなどは、利用者さんも参加しやすい作業ですよね。こうすることで食べるだけでない食事が実現できるようになります。
・小さなキッチンの場合は…
小規模な施設の場合は、食事スペースに近接した小さなキッチンで調理をすることが多いと思います。
この場合お勧めなのは、対面キッチン(あるいはアイランドキッチン)にすることです。
いくつかメリットがありますが、その一つは食事スペースを見ながら調理が行えることです。
利用者さんの様子を見ながら、あるいは話しをしながらでも準備を進めることが可能です。
また、調理をしている様子が見えると、自分も手伝いたいと感じる利用者さんが増えます。
この気持ちは大切にしたいので、座ったままでも車いすでも作業できる低いカウンターやシンクを設けましょう。
食事の準備を行い、みんなで楽しく食べて片付ける、そんな食事が実現できるようになります。
食事を作ってもらって食べさせてもらっている、という受け身の食事が自分が積極的に関わりみんなで楽しむ食事に変わります。
ぜひ介護施設の計画・設計・改修の際には参考にしてください。
利用者さんの目の前で調理して食事を提供します。美味しくないはずがありません。