座位は行為に合わせて変わります
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
今日は先々週もお伝えした「SIG姿勢保持講習会」の内容から…。
まずはこちらの図をご覧ください。
>椅子のプロトタイプ
(pdfデータへのリンクです)
「椅子のプロトタイプ」と呼ばれる図です。
これは千葉大学名誉教授の小原二郎氏の研究室がまとめたもので、1960年代に行われた調査に基づいて作成されています。
6つの座位姿勢が詳記されていますが、1は作業姿勢、2から4はリラックス姿勢、5や6はリクライニングの休息姿勢と考えてよいでしょう。
今でも人間工学に基づく椅子設計の基本データとして使われています。
講習会では、いくつか行った実験について、この図を用いた説明がありました。
・学生による車いすの実験
学生に、車いすの2時間座ってもらう実験を実施。どんな姿勢をとってもよいと伝え、その様子を観察した。
<結果>姿勢を変えながら座っていたが、いずれも2・3・4の姿勢だった。
→2・3・4はリラックスできる楽な姿勢である。人は姿勢を変えながらでないと2時間座っていることはできない。
・新幹線座席での姿勢観察
新幹線での着座姿勢を観察する。
<結果>リラックス時は4の姿勢、食事の際には1の姿勢になっていた。
・高齢者の姿勢観察
複数の車いす利用の高齢者に、一時的に車いすから椅子に座り替えてもらい、前後の姿勢変化を観察。
<結果>車いすでの姿勢は3あるいは4であったが、椅子では1か2であった。
→車いす姿勢は長時間のリラックスが求められる。目的をもって短時間椅子に座り替えると姿勢が変わる。
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いかがでしたでしょうか。
人はその時行っている行為に合わせて姿勢を変えています。
介護が必要な方の場合、姿勢の調整をご自分で出来ない場合があります。ですから人を支える道具が姿勢を整えてあげる必要があるのです。
車いすに座っているときは、比較的長い時間リラックス状態で座っている必要がありますよね。
ですから3や4の姿勢になっているのは理にかなっています。ただ、この姿勢で食事を摂るのは難しいですね。
また一般の椅子は2や3の姿勢を基準につくられています。それは椅子に座ってくつろごことを優先しているからです。
実は私達はこの2や3の姿勢向けに作られた椅子で食事も行っています。それは椅子のサポートが無くても自力で体を起こして食事に適した姿勢をとる事ができるから可能なことなのです。
介護が必要なお年寄りの場合、食事に適した前傾姿勢をとるのが難しいことがあります。ですから椅子のサポートが必要なのです。
実は「支える椅子」も「椅子のプロトタイプ」の図を基準にして人間工学に基づく設計を行っています。
ちなみに「支える椅子」は1の姿勢でデザインしています。休息には適しませんが、食事や作業には最適です。
食事、休憩、仮眠などその時行う行為により適した姿勢は異なります。
ぜひ最適な姿勢がとれるよう、椅子やソファー等を上手に使用してサポートを行えるようにしてみてください。
食事には食事に適した椅子を。ご自分で食べる事ができ、笑顔も増えます。
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