28.骨折を防止する床にしよう

介護環境デザイナーの間瀬樹省です。

 

介護施設における事故と言えば、真っ先に挙げられるのが「転倒」だと思います。

 

そして、事故の結果として起こるのが「骨折」ですね。

 

骨折は、怪我をしたご本人はもちろん辛いですが、担当していた職員にとっても精神的に辛いものだと思います。

 

骨折が起こらないように、ご本人の動きを評価し安全な移動ができるような環境を整える事は大切です。

 

しかし、どんなに環境を整えても転倒をゼロにすることは不可能です。

 

転倒して骨折すると、元気な方でもその間に筋力や体力が落ちてもとに戻すのは大変なもの、お年寄りの場合はもっと大変になりますね。

 

そこで、転倒が起きてもなるべく骨折が起こりにくいような配慮を建築側でも行っておくべきです。

 

具体的には、床に倒れてしまった時の衝撃を吸収しやすい床にすることが必要となります。

 

鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物ですと、床はほとんどコンクリートになります。

 

このコンクリートに直接ビニールシートやフローリングを貼るととても硬く衝撃を和らげることのできない床になってしまうのです。

 

このような書き方をすると「とても硬そうだな」と思われるでしょうが、残念ながら多くの建物の床はこのような構造になっています。

 

ではどのように対策を行うかというと、大きく分けると2通りです。床を二重にする方法と衝撃吸収シートを使用する方法です。

 

床を二重にする方法は、コンクリートの床の上に木などで床をつくるのですが、コンクリートの床との間に空間をとっておきます。

 

そうすると、床の上に荷重がかかると材料がたわんで衝撃を吸収することができるのです。

 

衝撃吸収シートは、床材のメーカーが発売しているもので、ビニル床シートやカーペットの下に敷いて使います。

 

厚みは数ミリ程度ですが、衝撃の吸収には効果が高いようです。

 

床をカーペットにすると、他の素材よりは表面が柔らかく衝撃を吸収しやすくなりますが、能力的には十分ではないようです。

 

床をカーペットにする場合でも、どちらかの対策を行っておくと十分な衝撃吸収性能をもたせることができます。

 

床材の選定は、利用する方の健康や命に関わる問題です。

 

介護施設の新築や改修の計画の際には、ぜひ優先してコストをかけてより良い整備を行う設計にするようにしてくださいね。

 

骨折を防止する床にしよう
改装で床材をカーペットにした例。「家の中なら靴を脱ぎたいよね」ということで、計画しましたが、転倒時の衝撃吸収だけでなく、履きっぱなしの室内履きを止める事による水虫激減の効果もあったそうです。