30.地域に出て行きやすい建物にしよう
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
介護施設建設についての打合せをすると「地域との関係をもちたい」「地域とつながりたい」という言葉をお聞きします。
そのために地域の方を呼び込むためのスペースを設けることをお考えになることが多いですが、その前にやることがあります。
それは、施設の方々、利用者さんや職員さんがまず地域に出ていくことです。
普通、地域で暮らしていると、地域にある様々なサービスを利用しながら生活しますよね。
その「当たり前」をまず行う事が大切だと思うのです。
普通、欲しい物があれば買い物に行きますね。
髪の毛を切りたければ理容室や美容院に行きます。
お酒が飲みたければ居酒屋に行くでしょう。
介護施設にいると、向こうから来てもらうのが当たり前になってしまって生活が建物内で完結してしまいがちです。
それで「地域で生活している」「地域の一員」になるのは難しいのではないでしょうか。
まずは自分たちが外に出て行き、存在をアピールしサービスを受けながら暮らす地域の一員であることを認識してもらう事が必要です。
建物としては、外出が行いやすいように、出入口付近に洗面や手洗いを設けるなどの工夫を行うようにします。
それを実施した上で、地域の方を招く空間をつくるのであれば、そこで提供するサービスは本格的なものにする必要があります。
コーヒーを出すのなら、本格的なものを気の利いた空間で提供。
趣味活動ならカルチャーセンターより本格的なプログラムを。
そうでないと、わざわざ地域の方は来てくれません。
安易な考えで中途半端なサービスを提供しても利用してくれる方は残念ながらほとんどいないのです。
ここにわざわざ来てもらう理由が必要です。その為には他にない充実した空間、サービスをつくる必要があるのです。
地域とのつながりは大切、その方法を空間、サービスの両面からぜひしっかり考えてみてください。
介護施設の新築や改修の計画の際には、ぜひこの点についても考慮して設計にするようにしてくださいね。
入口付近に設けた洗面台(手洗い)の例。写真右側にトイレも設けています。